| 【高性能浄水装置 途上国から熱い視線】 |
飢餓や貧困に苦しむ開発途上国が待ち望むものは安全な飲料水といわれる。上下水道などのインフラが到底おぼつかない社会だけに水をめぐる環境は悪化する一方で、やむなく不衛生で汚れた水を生活用水や飲用に使わざるを得ない暮らしが続いている。
その結果、慢性的な下痢、腹痛に苦しみ、子供たちの高い死亡率の原因ともなっており、世界保健機構(WHO)が最も頭を痛めている問題である。
そんな地球的悩みを少しでも解消したいと岩村さん(工学博士)が開発したのが新型浄水装置(商品名・カナートスS)だ。水質の改良や浄化には逆浸透膜方式が普及しているが、これでは微細な物質は除去できない上、汚染を濃縮した排水が残る。これを完全に処理しないと二次汚染の恐れがある。
新型浄水装置は、次亜塩素酸塩と鉄粉を使うことで重金属など有害物質の大半を取り除き、さらに逆浸透膜を通すことでヒ素濃度を従来の6分の1に減らす機能を発揮、汚水を上質の飲料水に変えてしまうという。イラク復興支援でサマワに派遣された自衛隊には地元民が水確保を熱望しているが、この装置はそんな期待に応えられるものといえる。 |
| 【無毒化徹底ポリシーに】…インタビュー形式での記事です。 |
水が豊富な日本ですが、開発、工業化によって地下水や河川の汚れが進んでいます。私は合成化学の研究で博士号を頂きましたが、その知識と体験の大半を「いかに水を浄化するか」の研究に費やしてきました。
そして処理した汚染物質を埋めたり海洋投棄したりするだけでは単に置き換えに過ぎない。有害なものはできるだけ分解、無毒化させ「再び自然を汚さない」ことをポリシーに、技術開発をしてきたのです。 |
| 記者「まずどんなものから手掛けたのですか」 |
いつでもどこでも水が飲めるこの国でも、地震や台風があると断水し、飲料水が入手できなくなります。そんな時、雨水や池、川、プールの水を短時間で飲める水にできないかと1996年に緊急時用の水処理装置を考案しました。重さ約28キロと持ち運びができるもので、次亜塩素酸カルシウムで殺菌し、マイクロフィルターで濾過し、ミネラル石でPH調整するもので水道水のレベルはクリアできました。
これを翌年春行なわれた旧建設省主催の防災コンペに出したところ性能が認められ入賞しました。99年にWHOの研究チームが水に悩むアフリカへ食生活の調査に行くと聞いたので、現地が希望すれば寄付して下さいとこの装置の1台を託しました。タンザニアの首都ダルエスサラームにあるムニンビル大学で試験運転したところ、汚れた水が短時間できれいな水になると大喜びされたそうです。ぜひ欲しいとのことでそのまま贈呈し、ムニンビル大学からは私に感謝状が届きました。
|
|
記者「 新型の浄化装置は性能が格段に違うのですか」 |
緊急時用の装置は、とりあえずリスク除去ができればよかったのです。しかし、有害なものを完ぺきに取り除き、より質の高い水をつくろうと思っていました。そこで、一次処理で殺菌用に次亜塩素酸ナトリウムと新たに鉄粉を使いました。次亜塩素酸塩は毒性のある三価ヒ素を五価ヒ素に変化させ、これで毒性は16分の1に減少します。五価になると反応しやすいので80%が鉄粉に吸着することが分かりました。
さらに活性炭と逆浸透膜で残りのヒ素やDDTなど有機有害物質を取り除きます。鉄粉を使うことで有害物の大半が分離でき、逆浸透膜の負担が軽くなり除去機能が向上するのです。科学的殺菌と物理的除菌をうまく組み合わせることができました。
ヒ素が激減 性能は6倍
これで例えば、井戸水1リットル中にヒ素が2000ppb含まれている場合9.4ppbまで減少し、日本とWHO基準(10ppb)を下回ります。逆浸透膜だけなら60ppbどまりですから、6倍の性能といえます。問題のレジオネラ菌なども完全除去します。鉄粉は回収して熱処理し、鉄、ヒ素、重金属に分離しますから再び自然を汚すことはありません。
1日に9トンの処理能力があり、途上国の300万人程度の集落全員の飲料水を提供できます。思案を重ねて10年、成果のデータをそろえる計測器が高価で苦労しましたが島津製作所に好意的に協力してもらい感謝しています。
また、汚染湖沼のアオコを分解・除去する装置も考案、埼玉、鳥取県で活用してもらっています。 |
|
記者「 早く途上国に送りたいですね」 |
| 水不足の国の井戸水は地下水の枯渇で深くなる一方で、ヒ素、カドミウム、鉛の含有量が増えています。特にバングラディッシュでは、1000万人にヒ素汚染の恐れがあると言われている。今、インド大使館や中国・深?、ベトナムの企業から使いたいと問い合わせがきています。政府開発援助(ODA)を活用して世界の困っている人々に貢献できればと願っています。 |
| 記者 梶原 誠一様 |